足場の考え方

安全対策

建築現場において、足場の安全は極めて重要な課題です。適切に設置された足場は作業の効率を向上させるだけでなく、作業員の生命を守るための重要な要素となります。しかし、足場の設置が不適切である場合、重大な事故を引き起こす可能性があります。この記事では、足場の安全を確保するための基本的な考え方を、現場監督として理解し、実践するためのポイントについて解説します。

そのポイントとは、足場を大きく以下の三つの要素に分けて考えるというものです。

  1. 足場の崩壊防止
  2. 墜落防止(人の墜落)
  3. 落下防止(物の墜落)

それぞれについて、次に解説いたします。

1. 足場の崩壊防止

足場の崩壊防止は、足場の安全確保の基本中の基本です。足場の崩壊は、作業員や周囲の人々に深刻な危険をもたらすため、設置基準を厳守することが必要です。

設置基準の遵守

足場の設置基準は、安全を確保するために定められており、以下の点に特に注意が必要です。

  • 積載荷重: 足場にかかる荷重は、作業員や材料の重さを考慮して設計されています。過剰な荷重をかけないよう、常に積載荷重を確認し、必要に応じて補強を行いましょう。
  • 根がらみ: 足場に加わる荷重を足場全体で支えるために、足場の根元部分を相互に固定する根がらみが必要になります。根がらみはなるべく低い位置に取り付けますが、住宅の現場では根がらみが高かったり、必要な場所に設置されていないケースもよく見かけられます。
  • 筋かい(斜材): 足場の安定性を高めるために筋かいを適切に配置します。筋かいは足場の揺れを防ぎ、全体の強度を高めます。
  • 壁つなぎ: 足場を建物に固定するための器具であり、風や振動による足場の揺れを防ぎます。木造住宅の場合は、壁つなぎの代わりに圧縮材を用いるケースが多いですが、これは相対する圧縮材の両方を固定することで効果を発揮しますので、これらがしっかりと固定されていることを確認しましょう。

2. 墜落防止

墜落防止は、作業員の命を守るために極めて重要な要素です。高所での作業は常に危険が伴うため、墜落防止対策を徹底することが求められます。

墜落防止のポイント

  • 手すりと中桟: 足場の縁には、作業員が誤って墜落しないように手すりと中桟を設置します。この手すりと中桟の設置基準も明確に決められていますので、一度よく確認してみてください。
  • 作業床と建物との距離: 作業床と建物の壁面との距離は、一般的には30cm以内に保つことが推奨されています。ただし30cm以下なら良いという訳ではなく、上記の手すりと中桟も設置するなど、安全面の配慮は必要です。
  • 墜落防止装置(安全帯やハーネス): 高所作業を行う場合、作業員は必ず適切な墜落防止装置を着用する必要があります。安全帯やハーネスは、確実に取り付けられる状態になっていることを確認し、注意喚起の表示を合わせて設置するなどもおこないましょう。

3. 落下防止

落下防止は、作業中に物が落下して第三者や作業員自身に危害を及ぼさないようにするための対策です。

落下防止のポイント

  • ネット: 足場全体にネットを張ることで、工具や材料の落下を防ぎます。ネットは定期的に点検し、破損や緩みがないことを確認しましょう。
  • 幅木: 足場の作業床の端に幅木を設置することで、小さな工具や材料の落下を防ぐことができます。幅木はしっかりと固定されていることを確認し、作業員が蹴ったり外してしまうことがないように注意しましょう。
  • 工具・材料の管理: 工具や材料は、使用後すぐに所定の場所に戻し、整理整頓を心がけます。落下しやすい場所には物を置かないようにし、作業員全員で落下防止の意識を共有します。

安全点検と教育

これらの対策を講じた上で、現場監督として定期的に安全点検を行うことが不可欠です。また、新たに入場する作業員や定期的な安全教育を通じて、全員が安全意識を高めることも重要です。

  • 定期的な安全点検: 足場の設置状況や保守状態を定期的に点検し、不具合があれば即座に修正します。特に、風雨の後や大規模な荷重がかかった後は念入りにチェックします。
  • 安全教育: 全ての作業員に対して、足場の安全に関する教育を定期的に実施します。教育内容には、足場の使用方法や墜落防止装置の装着方法、緊急時の対応などを含めます。

まとめ

足場の安全を確保するためには、上記の三つの要素 —①足場の崩壊防止、②人の墜落防止、③物の落下防止— を徹底的に理解し、現場で実践することが不可欠です。現場監督として、これらの基準を守ることはもちろん、作業員全員の安全意識を高めるための教育や点検を継続的に行いましょう。

建築現場の安全は、全ての作業員の協力と意識の共有によって成り立ちます。安全な足場は、安全な作業環境を提供し、ひいては高品質な建築物の完成に繋がります。現場監督として、常に足場の安全に対する責任を持ち、最善の努力を尽くしましょう。

安全に関する研修や、業者会・安全大会での講演等も承ります。業者会・安全大会では、先に現場を見せていただければ、その評価を踏まえてお話しします。
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